雇用市場の最新動向と景気減速の影
有効求人倍率の連続低下と新規求人の減少
中国地域の雇用情勢は、持ち直しの動きの中で一部に弱さがみられます。2025年7月の中国地域全体の有効求人倍率は1.39倍となり、3か月連続の低下となりました。また、新規求人数も前年同月比で2.0%減となり、3か月連続の減少を記録しています。
広島県内(2025年8月)の状況も同様に、有効求人倍率は1.41倍と前月を0.03ポイント下回り、2か月ぶりに低下しました。新規求人数は21,532人で、前月比で972人減少し、こちらも2か月ぶりに低下しています。広島労働局は、求人が求職を上回る状況は続いているものの、景気の持ち直しの動きに弱さがみられると指摘しています。
物価高と生産活動の弱さが雇用に与える影響
新規求人を産業別に見ると、広島県では「建設業」「宿泊・飲食サービス」「情報通信業」などで増加が見られましたが、「製造業」や「卸売り・小売り業」などでは減少しました。
中国地域の景気基調は「持ち直しの動きの中で一部弱含んでいる」と判断されており、鉱工業生産指数も2か月連続で低下しています。特に生産用機械工業は高水準ながらも低下傾向にあり、自動車(乗用車・トラック・主要部品)は需要動向に応じた生産計画の見直しによって低下傾向が継続しています。広島労働局は、こうした経済状況に加え、物価上昇が雇用情勢に与える影響に注意が必要だと警鐘を鳴らしています。
若年労働力確保に向けた外国人材の活用
外国人雇用企業の割合と製造業の依存度の高さ
県内企業は、人材不足の解消や若い労働力の確保を主な目的として、外国人労働者の雇用に積極的に取り組んでいます。ひろぎんホールディングスが県内企業458社から得たアンケート結果によると、外国人を雇用している企業は約32.1%14.4%の企業が今後雇用を検討中と回答しています。
業種別では、製造業での外国人雇用が進んでおり、特に造船関連企業では82.2%、自動車関連企業では55.6%宿泊・飲食業となっています。
技能実習制度に代わる新制度への移行
外国人労働者の受け入れ制度については、現在、従来の「技能実習制度」に代わる新たな外国人受入制度「育成就労制度」への移行が予定されています。この新制度は、2027年までに施行される見込みであり、今後の労働力確保の枠組みに大きな変化をもたらすとみられます。
私の見解
広島県をはじめとする中国地域の雇用情勢は、数字上は依然として求職を上回る水準にありますが、その裏側では産業構造の転換期を迎えています。製造業の弱含みや新規求人の鈍化は、地域経済の持続的な成長に向けた課題を浮き彫りにしています。
物価上昇による企業コストの増大や、需要変動に伴う生産調整は雇用安定に影響を及ぼしています。加えて、若年層の県外流出が続く中で、地元における「働きがい」と「生活のしやすさ」を両立する環境整備が急務だと感じます。
外国人材の受け入れは、労働力不足の緩和に加えて地域の多様性を高める好機でもあります。制度移行期において、企業・行政・地域社会が協働し、共生型の雇用モデルを築くことが、広島の持続可能な発展につながると考えます。


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