秋の味覚「米」の現状:価格高騰と収穫の遅れ、そして異業種参入の動き

メモ

猛暑と集荷競争による新米価格の高止まり

この秋、広島県内でコシヒカリの新米販売がJAの直売所で開始されましたが、米価が高止まりしています。広島市安佐南区の直売所では、県産コシヒカリ5キロが税込み5,480円という価格がつけられ、去年の新米に比べて約1,800円の値上がりとなりました。価格の高騰の背景には、今年の猛暑により米の出来が難しい状況にあったことがあります。

また、JA全農ひろしまが以前、新米5キロあたり税抜き4,000円前後と予想していたにもかかわらず、実際には1,000円ほど高くなった原因として、JAは明言を避けていますが、農家への取材から集荷競争の激化が判明しています。民間業者との競争により、地域のJAの中には、農家に支払う前払い金を当初の金額から2割以上上乗せして買い取る動きが見られています。

長雨による稲刈りの大幅な遅延と品質への懸念

広島県内の米どころでは、9月に入って雨の日が続いた影響で、稲刈りに大幅な遅れが生じています。北広島町大朝地区では、9月10日頃から毎日降る雨により、田んぼに水たまりができ、コンバインなどの機械が埋まって動けなくなるため、稲刈り作業が進められません。生産組合の組合長は、今年の秋雨前線による雨は長すぎるとし、入田が可能な圃場から選んで刈り取るしかない状況だと述べています。

大朝では9月23日の時点で、すでに月間降水量が平年値を上回っており、今後さらに増える見込みです。県内各地の農家からも、稲刈りが1週間から10日以上遅れているという報告が多く寄せられています。農家からは、ゲリラ豪雨で稲が倒伏し、このままだとイネから芽が出て品質低下が心配されるなど、「異常事態」「大変な秋になりそう」という切実な声が上がっています。

運送会社の農業参入と高い評価を得た初収穫米

福山市の運送会社「大成」が、高齢化が進む農村の課題に対応するため、農業を応援したいとの強い思いから異業種参入し、世羅町でコメ作りに挑戦しました。同社は昨年、「ミライズフーズ」を設立し、今年は後継者不在となった集落法人の田んぼを10年契約で引き継ぐなど、農業初心者の代表らスタッフが地元の農家の指導のもと、コメ作りを行ってきました。

ミライズフーズは水不足という厳しい状況に直面しましたが、福山から三次市内の田んぼへトラックで水を運び続けるなど対応しました。代表は、稲穂を自分の子どものように感じており、初収穫した「あきさかり」の出来栄えを「100点満点の120点」と高く評価しています。

この米は福山市内のラーメン店に納品され、店側も「香りがすごく良く、チャーハンにも合う」と品質を認めました。すでにミライズフーズには来年の作付依頼が来ており、作付面積は今年の4倍となる20ヘクタールに拡大する見込みです。社長は、さらに多くの若い人を農業に呼び込むための施策を考えています。

食への感謝を育む幼稚園児の稲刈り体験

三次市では、三次中央幼稚園の年長組の園児54人が、自分たちが5月に植えた「あきろまん」の稲刈りを体験しました。稲作体験は、食べ物に対する感謝の気持ちや収穫の喜びを育むことを目的として毎年行われています。

園児たちは農家から、鎌の安全な使い方や、一株の稲からおむすび2個分が収穫できることなどを学びました。猛暑の影響が心配されましたが、水の管理がしっかり行われたおかげで稲は平年並みに育ちました。

園児たちは、鎌を使う作業に難しさや緊張を感じつつも、「楽しかった」と収穫の喜びを表現しました。収穫された約150キロの米は、来月中に幼稚園でおにぎりにして食べられる予定です。

私の見解

今年の新米価格の高騰は、単に「猛暑の影響」だけでなく、JAと民間業者との集荷競争が背景にある点が重要です。農家にとっては収入増につながる一方、消費者にとっては大きな負担となります。

さらに長雨による稲刈りの遅れ・倒伏・発芽といった「品質低下リスク」が加わり、農業現場は二重三重の苦しさに直面しています。

ただし、福山の運送会社「大成」が農業に参入し、初収穫米が高評価を得た事例や、幼稚園児の稲刈り体験のような取り組みは、地域農業の新しい担い手の登場や食育の広がりとして希望の光を示しています。

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