中国地域の経済・雇用動向(2025年7月):小売は底堅いも生産は弱含み

メモ

中国地域経済の全体像と生産の減速

景気基調判断の修正と不確実性の増大

2025年7月の指標を中心に見た中国地域の経済は、「持ち直しの動きの中で一部弱含んでいる」と判断されています。県内の景気は緩やかな回復基調にあるものの、先行きの見通しについては、日米間の通商交渉の合意後も、各国の通商政策や海外経済・物価動向を巡る不確実性が高く、今後の企業活動への影響を注視する必要があります。景気の現状に対する判断DI(景気ウォッチャー調査、7月)は前月差0.7ポイント低下の45.5となりましたが、先行きDIは前月差1.5ポイント上昇の47.9となりました。

鉱工業生産指数の連続低下と主要業種の動向

2025年7月の中国地域の鉱工業生産指数(季節調整済)は94.2となり、前月比で6.6%の低下と2か月連続の低下となりました。出荷指数も5.2%の低下、在庫指数も7.9%の低下と、軒並み低下しています。主要業種別では、電子部品・デバイス工業やパルプ・紙・紙加工品工業、食料品・たばこ工業が上昇しました。一方で、自動車(乗用車・トラック・主要部品)は、需要動向に応じた生産計画の見直しにより低下傾向にあり、生産用機械工業も低下しましたが、半導体製造装置の影響で高水準を維持しています。

貿易と新車販売の弱さ

輸出は、自動車や鉄鋼を中心に前年同月比23.8%減となり、6か月連続で前年を下回りました。輸入も鉄鉱石などが前年を下回り、6か月連続で減少しています。また、乗用車の新車登録・届出数は、普通車、小型車、軽乗用車の全てが前年同月を下回り、合計で前年同月比6.4%減と7か月ぶりに前年を下回りました。

小売市場と個人消費の明暗

全体売上の9か月連続プラスと百貨店の苦戦

2025年7月の中国地域における商業6業態の販売額合計は、前年同月比1.5%増と9か月連続で前年を上回りました。しかし、内訳を見ると明暗が分かれています。スーパーは、全店舗で前年比5.2%増、既存店で2.9%増と9か月連続で前年を上回る一方、百貨店は全店舗・既存店ともに6.3%減となり、23か月連続で前年を下回る結果となりました。

猛暑が影響した消費動向

スーパーでは、物価上昇による米の販売増加や刺身の売上増が好調要因となり、また猛暑の影響で家庭での調理が敬遠され、冷やし麺や揚げ物が好調でした。コンビニエンスストアでも飲料、アイス、冷やし麺が好調でした。一方で、百貨店では猛暑による来店客数の減少や、高額な金製品・美術品の売上減、ハンドバッグや靴の動きの鈍さが影響しました。ホームセンターでは、猛暑で散水用品やファン付きウエアが好調でしたが、虫が出なかった影響で殺虫剤が低調でした。

広島県の地域別小売動向

広島県の小売市場(百貨店+スーパー合計、既存店)の販売額は、前年同月比0.6%増と2か月ぶりに前年を上回りました。商品別では「飲食料品」と「その他の商品」が前年を上回りましたが、「婦人・子供服・洋品」「身の回り品」など7商品は前年を下回っています。

私の見解

中国地域の景気は回復基調が続いている一方で、海外経済や通商政策の不確実性が高まり、先行きは慎重な見極めが必要です。地域の企業は外的要因を織り込んだ経営判断が求められます。

鉱工業生産や輸出の連続低下は需要調整の兆候です。自動車や鉄鋼の弱含みはサプライチェーンや雇用に影響を与えますが、半導体製造装置など高付加価値分野は依然として地域を下支えしています。

小売は業態で明暗が分かれ、百貨店の苦戦に対してスーパーやホームセンターは猛暑対応商品で好調でした。自治体と事業者は商品戦略や観光施策を連携させ、地域の消費を持続的に喚起すべきです。

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