芦田川の洪水と水質汚染の歴史を探り、治水対策と水質改善の取り組みを通じて、芦田川の環境を守るためにすべきことをご紹介します。
洪水との戦い:自然災害と治水対策
芦田川は、何度も大きな洪水を引き起こして、人々にたくさんの困難を与えてきました。大正8年の大水害では、神辺や千田といった地域が水につかってしまいました。また小田川や瀬戸川が決壊して、津之郷、神島、佐波が水浸しになりました。さらに芦田川の堤防が壊れてしまったため、郷分、山手、草戸、福山といった地域は泥だらけになってしまいました。
昭和20年には、枕崎台風という大きな台風が福山にも近づき、85人もの人々が亡くなってしまいました。さらに堤防が35か所も壊れてしまい、護岸も10か所崩れてしまいました。しかし、このような大変な経験を教訓にして、人々は河川の改修、芦田川河口堰の建設、八田原ダムの建設など、香水を防ぐための対策を進めました。
芦田川の現状:「中国地方で最も汚い河川」の歴史
現代の芦田川は、流路延長86キロメートル、流域面積860平方キロメートルを有しています。
芦田川は、かつては「中国地方で最も汚い河川」と言われていました。それは平成23年まで38年間も続いていました。その原因の一つは、芦田川の支流である高屋川の水がとても汚れていたからです。
高屋川の周辺は昭和から平成にかけて、人々がどんどん増えてきました。人々が増えると、生活排水や工業排水など、水を汚すものも増えます。これが水質を悪くする一因です。また、芦田川は他の川と比べて、水が少ない川です。水が少ないと、少しの汚れでもすぐに水全体が汚れてしまいます。だから、芦田川は水質が悪くなりやすいのです。
そこで、人々は高屋川河川浄化施設という、高屋川の水をきれいにするための施設を作ったり、下水道の改善をしました。この取り組みのおかげで、芦田川の水はどんどんきれいになってきました。
水がどれだけ汚れているかを測るための指標の一つにBOD(生物化学的酸素要求量)があります。これは、水中の有機物(生物が作り出す物質)が、微生物(バクテリアなど)によって分解されるときにどれだけの酸素が使われるかを測ります。
例えば、川にゴミや汚水が流れ込むと、その中に含まれる有機物が増えます。この有機物を微生物が分解するためには酸素が必要となります。そのため、有機物が多いほど、つまり水が汚れているほど、必要な酸素の量も増えます。この酸素の量を測ることで、水がどれだけ汚れているかを知ることができます。
つまり、BODの値が大きいほど、水は汚れているということになります。このように、BODは河川の汚れ具合を知るための大切な指標となります。
河川名 | 調査地 | 地先名 | 平成23年BOD 年平均値(mg/L) | 令和3年BOD 年平均値(mg/L) | 水質改善幅 (mg/L) |
---|---|---|---|---|---|
芦田川 | 久佐 | 府中市 | 0.8 | 0.6 | 0.2 |
芦田川 | 大渡橋 | 府中市 | 0.8 | 0.6 | 0.2 |
芦田川 | 府中大橋 | 府中市 | 1.0 | 0.7 | 0.3 |
芦田川 | 上戸手 | 福山市 | 1.1 | 0.9 | 0.2 |
芦田川 | 中津原 | 福山市 | 1.1 | 1.0 | 0.1 |
芦田川 | 山手橋 | 福山市 | 1.8 | 1.0 | 0.8 |
芦田川 | 小水呑橋 | 福山市 | 3.6 | 2.6 | 1.0 |
砂川 | 中須 | 府中市 | 3.4 | 1.7 | 1.7 |
高屋川 | 川北 | 福山市 | 2.6 | 2.2 | 0.4 |
高屋川 | 横尾 | 福山市 | 2.4 | 2.2 | 0.2 |
そして、令和3年の3月末には、高屋川の水をきれいにする施設はもう必要なくなり、運転を完全に止めることができました。
現在「中国地方で最も汚い河川」はどこなのか
令和4年の水質調査では、中国地方でBODの値がもっとも高いのは、岡山県に流れる吉井川の永安橋調査地で、年間のBOD平均値は1Lあたり7.5mgでした。
県名 | 河川名 | 調査地 | 年間のBOD平均値 |
---|---|---|---|
岡山県 | 吉井川 | 永安橋 | 7.5 |
岡山県 | 旭川 | 桜橋 | 6.7 |
広島県 | 芦田川 | 小水呑橋 | 4.4 |
未来に向けて:水質汚染と環境保全
生活環境の保全に関するBODの値として、2.0mg/L以下が環境基準となっています。しかし、令和4年の水質調査では、芦田川の下流でこの基準を超える調査地が3か所もあります。
さらに、芦田川では不法投棄が問題になっています。不法投棄とは、許可なくゴミを捨てることを指します。令和3年度には、芦田川で269件もの不法投棄が確認され、過去10年間で最も多い年となりました。
その中でも、最も多いのは家庭ゴミの投棄で、全体の39%を占めています。また、アウトドアゴミや廃材の投棄も多く見つかっています。
芦田川と高屋川では、特に左岸側で投棄が多くなっています。また、芦田川の下流部で不法投棄が多いという結果が出ています。
芦田川の環境を守るためには、ゴミの不法投棄を減らし、水質を改善することが重要です。
参考URL
https://www.cgr.mlit.go.jp/fukuyama/river/environment/
https://www.cgr.mlit.go.jp/fukuyama/river/environment/purification.html
https://www.cgr.mlit.go.jp/kisya/pdf/230706-1top.pdf
https://www.cgr.mlit.go.jp/kasen/suishitu/pdf/H23_suishitu.pdf
https://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/topics/work/suisitu.html
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