増加する空き家と市の現状
江田島市では、少子高齢化や人口減少に伴い、空き家問題が深刻化しています。2021年7月時点での住宅総数10,184戸に対し、空き家と見られる住宅は1,865戸に上り、空き家率は18.3%です。これは2015年8月時点の13.0%から増加しており、空き家のうち約2割が不具合を抱える住宅となっています。
「空き家等」とは、居住やその他の仕事で常時使用されていない建築物とその敷地を指し、「特定空家等」は倒壊の危険性、著しい衛生上の問題、景観の著しい悪化、または放置により生活環境が損なわれる状態にあるものを指します。
国は空き家対策の基本指針を策定し、県は市町への技術的助言や連携調整、必要な援助を提供し、市町は国の指針に基づいて対策計画を策定し協議会を設置する役割を担っています。江田島市も「江田島市空家等対策協議会」を設置し、連携強化に努めています。
包括的な空き家対策とその成果
江田島市は、2016年度と2021年度に「江田島市空家等対策計画」を策定し、様々な取り組みを進めてきました。主な対策として、以下のようなものがあります。
- 広報・啓発活動: 空き家チラシの作成、講演会の開催、空き家相談窓口の設置。累計相談件数は496件に上ります。
- 利活用促進: 空き家バンク制度の運用(2007年~)、空き家購入補助(上限30万円)、修繕補助(上限30万円)、空き家活用モデル事業(累計2戸)。
- 適正管理促進: 空き家相続登記等補助(上限10万円)、家財道具処分補助(上限10万円)。
- 除却等支援: 危険家屋除却費補助(上限30万円)、空き家除却支援補助(上限10万円)、除却後跡地適正管理補助(上限10万円)。
2022年度の空き家対策補助の申請状況を見ると、購入補助や除却支援補助は予定件数を上回るなど順調に進んでいます。しかし、家財処分やDIY用具・材料購入、除却後跡地適正管理の補助は低調であるため、所有者等への広報活動をさらに強化していく方針です。
また、空き家活用モデル事業では、昨年度決定した能美町高田の物件が現在改修工事中で、2023年1月に入居者募集が予定されています。この事業は市が率先して空き家活用モデルを示すことで、民間での取り組み拡大を目指しています。改修工事期間中には、江田島市不動産連合会や広島県建設労働組合第6地域連合江田島の会員など事業者向けの見学会やワークショップも開催される予定です。
深刻な特定空き家問題に略式代執行
江田島市では、倒壊の恐れのある特定空き家に対し、法律に基づく略式代執行による解体工事が始まりました。これは江田島市内で2例目、広島県内では14例目となります。
今回解体されるのは、江田島市江田島町切串三丁目にある1971年築の木造3階建て一般住宅(延床面積84.65㎡)です。この住宅は、2018年に住人が亡くなって以降空き家となり、所有者や法定相続人が不明な状態でした。2024年5月に近隣住民から「3階が倒壊して潰れかけた家がある」と相談があり、調査の結果、建物の一部倒壊が確認されました。特に3階が倒壊し、外壁の一部が大破していることから、建材の飛散による人的被害の危険性が著しく高いと判断され、2025年2月に「特定空家等」に認定されました。
市は所有者等に対して2025年6月5日までに除却措置を命じましたが、対応が取られなかったため、江田島市空家等対策条例第7条に基づき、2024年6月末から7月初旬にかけて危険防止のための部分撤去と防護ネット設置の緊急安全措置を実施しました。そして、9月16日から略式代執行による解体工事が始まりました。
工事は12月上旬まで続く予定で、解体費用約330万円はすべて公費(国や市が負担)で賄われます。江田島市の担当者は、空き家の所有者に対し、深刻な状況になる前に個人で適切な管理を行うこと、そして解体補助や売買などの支援制度を早めに活用するよう呼びかけています。
タイムライン
- 2007年
空き家バンク制度 運用開始 - 2016年度
第1次「江田島市空家等対策計画」策定 - 2018年
江田島市江田島町切串三丁目の住宅が住人死亡後、空き家化 - 2024年5月
切串三丁目の住宅について、近隣住民から倒壊危険の通報 - 2024年6月末〜7月初旬
緊急安全措置(部分撤去・防護ネット設置)実施 - 2025年2月
当該住宅を「特定空家等」に認定
市は所有者等に「6月5日までの除却命令」発出 - 2025年6月5日
所有者側の対応なし - 2025年9月16日
略式代執行による解体工事開始(江田島市で2例目、県内14例目) - 2025年12月上旬予定
解体工事完了(費用約330万円、公費負担)
私の見解
江田島市の空き家問題は、数字からも分かるように急速に深刻化しています。
特に注目すべきポイントは次の3つです。
- 空き家率の高さ(18.3%)
全国平均(約13.6%:総務省2018年調査)を大きく上回っており、江田島市の少子高齢化・人口減少の速度が如実に表れています。 - 市の積極的な取り組み
空き家バンクや補助金制度、モデル事業など、利活用・管理・除却のバランスを取りながら包括的に進めています。成果として購入補助や除却補助の活用が増えているのは、市民の意識変化を示すポジティブな兆しです。 - 「特定空家」への対応強化
略式代執行という最終手段に踏み切った事例は、所有者不明土地問題や安全性の観点からも象徴的です。今後、同様のケースは増えると予測され、市の財政や人員にとって新たな負担となる可能性があります。
総じて、江田島市の現状は「全国的な空き家問題の縮図」であり、予防的な管理(早期の相続登記・補助活用)が市民の負担を減らす鍵だと考えます。
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