被爆地訪問要請の緊急性
核兵器リスクの高まりと被爆者のいない時代
広島市の松井一実市長と長崎市の鈴木史朗市長は、2025年10月末に日本を訪れる予定のドナルド・トランプ米大統領に対し、原爆投下で壊滅的な被害を受けた両市を訪問するよう求める連名の要請文書を送付しました。両市長は、世界が核の紛争リスクが高まる「人類の重要な岐路」にあると指摘し、被爆者が直接体験を語れなくなる「被爆者のいない時代」が近づいていると訴えています。この要請の目的は、トランプ氏に被爆者の声に直接耳を傾けてもらい、核兵器の使用がもたらす「非人道的な結末」を心で感じ取ってほしい、という点にあります。
NPT運用検討会議へのリーダーシップ要請
要請文書は日本語と英語で作成され、東京の米国大使館へ送られました。両市長は、トランプ大統領が来年開催される核兵器不拡散条約(NPT)の運用検討会議において、核軍縮の追求に向けて指導力を発揮することを希望している、と伝えています。トランプ大統領の日本訪問は、韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットに先立ち、10月27日から29日の日程で調整が進められています。
過去の訪問と国際的な背景
現職米大統領の被爆地訪問の歴史
現職の米国大統領として被爆地を訪問したことがあるのは、2016年に広島を訪れたバラク・オバマ氏と、2023年にG7広島サミットに出席したジョー・バイデン氏の2名のみです。広島・長崎両市は、2017年にトランプ氏がアジア歴訪で来日した際にも訪問を要請しましたが、この時は実現しませんでした。トランプ氏の今回の広島訪問が実現すれば、就任後初めてとなります。
ノーベル平和賞候補としてのトランプ氏への支持
一方、トランプ氏自身はノーベル平和賞受賞に強い意欲を示しており、ロシアはウクライナ戦争終結への努力に感謝し、トランプ氏のノーベル平和賞候補を支持すると述べています。ウクライナのゼレンスキー大統領も、トランプ氏が停戦を実現した場合にノミネートする考えを示していますが、受賞の可能性は低いとの見方もあります。
アジアでの外交的な動き
トランプ氏のアジア訪問に際しては、APECサミットの場で北朝鮮の金正恩委員長との会談の可能性が一部で取り沙汰されています。しかし、米国産業に必要なレアアースの輸出制限を理由に、トランプ氏は中国の習近平国家主席との会談は「理由がない」として否定しています。
私の見解
被爆地訪問の要請は極めて意義深いです。被爆の実相を直接伝える機会は減りつつあり、現職大統領の訪問は核の非人道性を世界に再提示する強いメッセージになります。実現を強く期待します。
NPT運用検討会議での指導力要請は現実的な期待です。核軍縮は言葉だけでは進みません。対話と透明性を基盤に、実効性のある措置と検証手段を示すことが重要だと考えます。
広島・長崎の訴えは地域の記憶を国際政治に繋げる重要な呼びかけです。自治体の声を外交に反映させ、核抑止依存から実務的な核削減へと転換する道筋を築くべきだと思います。


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