福山市の女性が約2787万円分の暗号資産を詐取される手口
2025年7月下旬、福山市に住む60代無職の女性が、通信事業者を名乗る男から電話を受けました。その男は、女性名義で不正に契約された携帯電話番号があるとして、女性が詐欺事件の容疑者であるかのように装いました。
その後、愛媛県警や検察官を名乗る人物が電話やLINEを通じて接触し、ビデオ通話で警察手帳のようなものを見せるなどして、女性を信用させました。犯人らは「容疑を晴らすためには全ての資産状況を確認する必要がある」と説明し、暗号資産の取引口座を開設するよう指示しました。女性は指示に従い、合計約2787万円分の暗号資産を購入し送金してしまい、だまし取られました。
安芸郡の女性も約2290万円の現金被害
同様に、安芸郡に住む70代の女性も特殊詐欺の被害に遭いました。2025年5月、通信事業者を名乗る男から「個人情報が悪用されて携帯電話が契約されている」という電話があり、次に警視庁捜査第二課の警察官を名乗る人物から連絡を受けました。
この人物は「口座が凍結される」「調査のために現金が必要だが、守秘義務があるため誰にも言ってはいけない」などと告げ、女性に指定された口座へ合計2290万円を振り込ませました。この被害は、金融機関からの不審な通報によって発覚しました。
警察からの警告と被害防止の成功事例
広島県警は、警察官が捜査のためと称して金銭を要求したり、SNSやビデオ通話で連絡を取ったりすることは一切ないと強く注意喚起しています。不審な電話やメッセージがあった際は、すぐに詐欺を疑い、家族や友人、または警察に相談することが被害を防ぐために非常に重要です。
一方で、詐欺被害を未然に防いだ事例もあります。呉市の呉東中央二郵便局の職員は、振り込みに訪れた80代の女性が落ち着かない様子だったため、詳しく事情を尋ねました。女性がSNSで知り合った外国人から手数料の支払いを求められていると説明したことから、職員は詐欺だと判断し、上司を通じて警察に通報し、被害を防ぐことに成功しました。
職員は、日頃から詐欺への注意喚起に気を配って窓口業務にあたっていたと話しています。広島県内では、今年7月までにSNS型詐欺による被害額が15億4000万円以上に上っており、一層の警戒が必要です。
私の見解
通信事業者や警察、検察を名乗り、ビデオ通話で「警察手帳のようなもの」を提示するなど、以前よりもリアリティを増した偽装が特徴です。権威を背景に「容疑者扱い」や「口座凍結」という不安を与え、冷静な判断を奪う典型的な心理操作です。
従来の現金や銀行振込だけでなく、暗号資産の口座開設を誘導する事例が目立ち、監視や追跡が難しい点が問題です。高齢者世代がデジタル金融やSNSに不慣れであることが、被害の深刻化につながっています。
呉市の郵便局職員が被害を未然に防いだ事例は、地域社会での「気づき」が有効であることを示しています。金融機関や郵便局、行政窓口が日常的に注意喚起し、少しでも不自然な行動に気づいた際に声をかける仕組みは非常に重要と考えます。
コメント