高原育ちの絶品いちご、全国の頂点に
広島県廿日市市吉和で栽培されている「冠苺(かんむりいちご)」が、2025年7月30日に開催された「第1回全国夏いちご選手権」で、唯一の最高金賞を受賞しました。
この快挙は、長野県や北海道といった著名なイチゴ産地を抑えての全国ナンバーワンであり、広島のフルーツが日本一の栄冠に輝いたことで、地域に大きな喜びをもたらしています。
審査員を魅了した味と生産者の情熱
日本野菜ソムリエ協会が主催するこの選手権には、全国各地から28品の夏いちごが出品されました。
20名の野菜ソムリエが、産地や品種、生産者などの情報を伏せた状態で試食審査を行い、その中で「冠苺」が「濃厚でまったりとした甘さと、しっかりしているけど主張しすぎない酸味の凝縮された味わい」や「甘味が強く、酸味とのバランスがとても良い。いくつでも食べたくなる」と高く評価されました。
この「冠苺」を栽培しているのは、農機具販売のアグリードが運営する「吉和ラフレーズ」です。標高約750mの冠高原で育てられており、昼夜の大きな寒暖差が、甘みをギュッと凝縮させ、香り高く、果肉もしっかりとした食感に育てる秘訣だとされています。
地域活性化への期待と今後の展開
栗田代表らは、2025年8月25日には廿日市市役所で松本太郎市長に受賞を報告。松本市長は地域ブランドとしての発展に期待を寄せました。
「冠苺」は、一般的に1月から3月が旬とされるイチゴに対し、6月から12月に収穫される夏いちごです。吉和ラフレーズは、2021年から通年栽培に取り組んでいましたが、冬場の暖房費高騰のため、今年からは夏いちごに特化しています。
現在品薄状態ですが、秋頃から吉和地区のスーパーで1パック1200円前後で販売が再開される予定です。また、来年には栽培用ハウスを増築して生産量を増やし、イチゴスイーツ専門のカフェを開業したり、キッチンカーでスムージーを提供したりするなど、吉和への誘客にも力を入れていく計画です。
廿日市市の中山間地域では、吉和ラフレーズを含む3つの農家が協力し、「苺キングダムプロジェクト」として年間を通じたイチゴ提供を目指しています。
私の見解
「冠苺」の最高金賞受賞は、広島県のフルーツ産業にとって大きな意味を持つ快挙です。従来「夏いちご」といえば長野や北海道が注目されてきましたが、標高750mの冠高原という立地条件を活かし、寒暖差を武器に高品質ないちごを生み出した点が評価に結びついたといえます。
また、単に「おいしい苺」を作るにとどまらず、栽培農家がカフェやキッチンカーといった六次産業化を見据えている点は、地域活性化の観点からも重要です。吉和のような中山間地域では、農業そのものが地域の暮らしや観光に直結しており、「苺キングダムプロジェクト」による連携は、地域全体のブランド形成に発展する可能性を秘めています。
今回の受賞は、単なる話題性を超え、廿日市の農業を全国にアピールする契機になるでしょう。今後は安定した生産体制を整えながら、観光と結びつけた発信力をどう高めていくかがカギになると思います。
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