広陵高校コーチ、不適切指導で謹慎処分
日本学生野球協会は2025年9月4日、広島県にある広陵高校の野球部コーチに対し、不適切な指導と報告義務違反があったとして、8月21日から3カ月間の謹慎処分を科したと発表しました。
寮内での不適切指導の内容
問題となったのは、今年4月23日夜の寮内での出来事です。清掃時間中に2年生部員が廊下で騒いでいたため、52歳のコーチが注意。その際、約1分間廊下に正座をさせました。日本学生野球協会はこれを「不適切指導」と判断しました。
事案発覚の経緯
この事案は夏の甲子園辞退後に行われた調査で判明しました。広陵高校が実施したヒアリングやアンケートの中で、8月20日に行われた1・2年生部員へのアンケート調査から、被害部員とは別の生徒の回答によって発覚しました。コーチは事案が明るみに出た直後に部員や保護者へ説明と謝罪を行い、理解を得たとされています。
学校と協会による処分内容
日本学生野球協会は、8月21日から11月20日までの謹慎を決定しました。加えて広陵高校は独自に、同コーチを6カ月間、野球部指導や寄宿舎業務から外す処分を実施。これにより、現在行われている秋季大会には関わっていません。
学校側のコメントと今後の取り組み
広陵高校は「適切な言葉での指導徹底」「体罰に関する研修会への参加」などを通じて、指導意識の改善に努めるとコメントしています。
過去の不祥事と新体制への移行
同校野球部では今年1月、部員間の暴力事案が発生し、日本高野連から厳重注意を受けました。その影響で夏の甲子園大会は初戦勝利後に辞退。中井哲之前監督が退任し、松本健吾監督が新たに就任しました。学校は第三者委員会を設けて調査を継続し、現1・2年生に暴力やいじめの問題がないことを確認しています。新体制の下で臨んだ秋季大会では地区予選を突破し、9月20日開幕の県大会出場を決めました。
広陵高校野球部 コーチ不適切指導問題 タイムライン
- 2025年1月
野球部内で部員間の暴力事案が発生。日本高野連は後に「厳重注意」とする。 - 2025年3月
日本高野連が、1月の暴力事案について「厳重注意」の措置を決定。 - 2025年4月23日夜
寮内で不適切指導が発生。
52歳のコーチが、廊下で騒いでいた2年生部員を約1分間正座させる。 - 2025年8月5日
日本高野連が、1月の暴力事案に関して「3月に厳重注意の措置をした」と公表。 - 2025年8月上旬(夏の甲子園大会)
広陵高校が出場。初戦に勝利するも、大会途中で辞退。 - 2025年8月20日
広陵高校が実施した1・2年生部員へのアンケート調査で、不適切指導の件が発覚。
被害部員本人ではなく、別の生徒の回答から明らかに。 - 2025年8月21日
日本学生野球協会によるコーチの謹慎開始(~11月20日まで)。
広陵高校も独自に「6カ月の謹慎処分」を決定し、指導や寄宿舎業務から外す。 - 2025年8月末
新監督・松本健吾氏の下で秋季県大会地区予選に出場し、予選を突破。 - 2025年9月4日
日本学生野球協会が正式に処分内容を発表。
学校は「適切な言葉での指導徹底」「体罰研修会参加」など再発防止を表明。 - 2025年9月20日~
広陵高校が秋季県大会に新体制で出場予定。
私の見解
今回の広陵高校野球部の不適切指導問題は、単発の行為そのものだけでなく、組織の体質や報告体制の在り方が問われている事案だと考えます。
事実としては「廊下で正座1分」という行為であり、体罰や暴力の中でも比較的軽微に見えるかもしれません。しかし日本学生野球協会が「不適切指導」と判断し、さらに報告義務違反を重視したことは、高校野球界全体として“指導の透明性”を徹底しようという姿勢の表れと捉えるべきでしょう。
一方で、広陵高校が夏の甲子園辞退後の調査でこの事案を自主的に報告し、さらに協会の処分に加えて独自に6か月の謹慎を科したことは、再発防止への強い姿勢を示すものです。これは学校が「問題を隠さない」方向に舵を切ったと評価できます。
ただし、今年1月の部員間暴力事案や甲子園辞退という重大な出来事に続き、再び指導者の問題が浮上したことで、外部からは「同じような問題が繰り返されている」という印象を持たれる危険もあります。第三者委員会の調査や研修の徹底を形式的なものにせず、指導文化そのものの見直しにつなげられるかどうかが、今後の信頼回復のカギになるでしょう。
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