広島市安佐北区の河川でPFAS検出
健康への悪影響が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)が、広島県内で複数箇所で検出されています。
2025年4月9日、広島市は安佐北区狩留家町を流れる湯坂川の支流2地点で、PFOSとPFOAが国の暫定指針値を超えて検出されたと発表しました。最大で暫定指針値の1.8倍の値が確認されています。
広島市は湯坂川の水は水道水には使われていないと説明していますが、暫定指針値を超えた地点の周辺にある井戸が飲み水として利用されていないか、今後調査を実施する予定です。
東広島市の高濃度汚染と住民の健康不安
東広島市では、アメリカ軍の川上弾薬庫がある地域で、井戸水から国の暫定指針値の最大300倍ものPFASが検出される深刻な事態が発生しています。アメリカ軍は、過去にPFASを含む泡消火剤を訓練で使用していたことを明らかにしています。
高濃度汚染地域の住民からは、恐怖を感じるという声が聞かれています。市が実施した臨時の健康診断では、善玉コレステロール値が他の地域に比べて低いことが判明しましたが、専門家はPFASの影響と断定できないとしています。また、医学的な評価が難しいことを理由に、住民の血中濃度測定などの詳細な調査は実施されていません。
PFAS汚染をテーマにした映画「ウナイ」が広島で上映
2025年9月には、PFAS汚染問題をテーマにした映画「ウナイ」が広島市内の横川シネマで上映を開始しました。この映画では、沖縄の汚染発覚の経緯や、この問題と戦う女性たちの姿が描かれています。
平良いずみ監督は、東広島市のような高濃度汚染が確認された地域では、行政が飲用水を利用していた住民の血中濃度を測り、医療モニタリングを行うことが不可欠であり、将来的な責任追及のためにデータを保有すべきだと訴えました。
上映会場には、自費で血中濃度を検査し、異常な高数値(838.8ナノグラム/ミリリットル)が確認された住民も訪れており、行政の対処の遅さへの諦めにも似た心境を語りました。監督は、日本における規制が世界に比べて緩い点を指摘し、PFASについて「自分事として考えてほしい」と願っています。
三原市の産廃処分場汚染問題とPFAS
2025年9月3日、三原市と竹原市の複数の町内会会長などが県に対し、三原市の本郷最終処分場への対応に関する陳情を行いました。この処分場では、過去3回にわたり基準値超えの汚濁があり、埋め立てが一時中止されましたが、汚染原因が不明なまま4月に再開が認められています。
地元住民は、産廃から汚水が流れ続けている実態を訴え、河川の水質汚染を懸念して稲作を断念する農家も出ており、地域が「廃村寸前」のような状況だと窮状を伝えました。陳情では、汚染原因の究明に加え、7月に処分場の排水からPFASが国の指針値を超えて検出された件についても、県に積極的な調査を求めています。
県は、PFASについて事実確認後に対応を検討するとしています。
私の見解
- 広島県内でのPFAS汚染の広がり
- 安佐北区の河川、東広島市の井戸水、三原市の産廃処分場と、発生源が複数にまたがっているのが特徴です。
- つまり「一点的な事故」ではなく、広島全体に潜在的なリスクが存在することを示しており、地域社会にとって深刻です。
- 行政対応の遅れ
- 広島市は「水道水には使われていない」と説明する一方で、周辺井戸の調査はこれから。
- 東広島市では「血中濃度調査は実施せず」という判断。
- 世界的にPFASは健康被害が強く疑われており、欧米では規制や補償の枠組みが進んでいるのに比べ、日本は住民の安心につながる調査・モニタリングが後手に回っています。
- 市民社会の動きと文化的広がり
- 映画「ウナイ」の上映は、住民の声を全国へ届ける強力な手段になり得ます。
- 「自分事として考えてほしい」という監督の訴えは、環境問題を行政だけに任せるのではなく、市民自身が当事者意識を持つ必要性を示しています。
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