三次もののけミュージアムに貴重な妖怪コレクションが追加

メモ

名誉館長・湯本豪一氏からの2度目の大規模寄贈

広島県三次市にある「湯本豪一記念日本妖怪博物館」(通称:三次もののけミュージアム)に、2025年9月22日、新たな資料が寄贈されました。資料を寄贈したのは、妖怪研究者で民俗学者、そして同館の名誉館長を務める湯本豪一氏(75歳、東京都)です。

今回の寄贈は、室町時代以降の妖怪に関する絵巻、錦絵、玩具など、732点に上ります。これは2019年の開館時に湯本氏から約5,000点の妖怪資料が寄贈されたことに続く、2回目の大規模な寄贈となります。

同館は、三次市が妖怪物語「稲生物怪録(いのうもののけろく)」の舞台であることから、妖怪を通じた町おこしの一環として2019年に開館し、これまでの入館者数は約38万人に達しています。

時代的な欠落を埋める中世期の絵巻も

今回寄贈されたコレクションには、これまで同館が所蔵する妖怪資料の中で最も古かった江戸時代よりも遡る、中世期(室町時代)の絵巻が含まれており、同館の時代的なコレクションの欠落を埋める重要な意義があります。

特に、入手が困難とされていた室町時代の作品「是害房(ぜがいぼう)絵巻」は、中国から渡来した大天狗が比叡山の僧侶との法力比べに敗れた後、日本の天狗から手厚い介抱を受けた話を描いたもので、全長は7メートル余りあります。

その他の資料としては、疫病の流行などを知らせる予言獣「尼彦」を描いた錦絵(明治15年)や、水難事故で命を救ってくれた天狗への感謝を込めた「天狗図絵馬」(文政3年)、昭和初期の大分県別府温泉の見せ物小屋「怪物館」のお土産写真など、人々の生活に密着した「妖怪文化」を示す多様な資料が多数含まれています。

贈呈式で湯本氏は、貴重な資料を収めるべき場所に収めることができ、これらの資料を精査することで時代ごとの人々の環境や考え方が浮かび上がるだろうと述べました。植田千佳穂館長は、楽しみながら歴史の勉強にもなる貴重な資料なので、ぜひ直接見てもらいたいと期待を寄せています。

これらの寄贈資料の一部は、10月16日から始まる企画展で公開される予定です。

私の見解

湯本豪一氏による二度目の大規模寄贈は、単なるコレクション拡充にとどまらず、三次もののけミュージアムの文化的価値をさらに高める重要な出来事です。特に、中世期の絵巻「是害房絵巻」の寄贈は、同館のコレクションに歴史的深みを加えるもので、妖怪文化を通して人々の生活や思想を理解する上で貴重な資料となります。

また、江戸・明治・昭和と時代を跨ぐ幅広い資料群は、単なる展示物以上に、地域文化や民俗学の研究資料としての価値が高いです。今回の寄贈は、妖怪研究の学術的側面と観光資源としての活用の両立を示す好例といえます。

個人的には、単に「珍しい妖怪資料」として展示するだけでなく、寄贈資料を通じて「人々の生活と妖怪の関係」や「時代背景の変化」を丁寧に解説する展示が行われれば、学術的価値と観光的魅力の両方を最大化できると感じます。

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