ポップアップストアでの大反響を経て常設化
スウェーデン発祥の家具大手イケアの日本法人「イケア・ジャパン」は、広島県内初となる常設店舗「IKEA広島」を2025年10月2日に開業しました。この店舗は、中国・四国地方において初めてのイケア常設店となります。オープンに先立ち、9月30日にはメディア向け内覧会が開催されました。
イケア・ジャパンの西日本エリアマネジャーは、2024年6月以降に広島県内で2回実施した期間限定店(ポップアップストア)が「非常に大きな反響」を得たため、今回の常設店出店に至ったと説明しています。
同エリアマネジャーは、IKEA広島が多くの顧客にとってアクセスしやすい場所にあり、「より身近な」存在になるという同社の戦略に合致しているとコメントしています。IKEA広島の店長は、これまでの経緯があったものの、地域に根付いた運営を通じて、より良い商品を提供していきたいと意欲を語っています。
店舗概要と商品ラインナップ
IKEA広島は、広島県府中町の「イオンモール広島府中」3階に位置します。店舗面積は約540平方メートルと小型店舗の位置づけで、国内ではショッピングモール内への出店としては3例目にあたります(横浜、京都に続く)。
イケアが展開する約9500点の商品の中から、家具、雑貨、食品など約900品が展示され、このうち約650品はその場での持ち帰りが可能です。大型家具など、持ち帰りが難しい商品については、電子商取引(EC)での購入が推奨されています。
商品構成の大きな特徴として、過去のポップアップストア(約250点の商品を取り扱っていた)で要望が多かった収納アイテムが充実している点が挙げられます。イケアの強みである北欧風のデザイン、低価格、機能性を備えた商品が多数揃います。
例えば、冷蔵・冷凍・レンジ・食洗器に対応し、食品保存や調理にも使えるシリコン製の保存バッグ「フィルフィスク」や、フリーザーバッグ、多機能時計の「クロッキス」、サメのぬいぐるみ「ブローハイ」といった人気雑貨が推奨商品として並びます。
また、店内には「スウェーデンフードマーケット」のコーナーが設けられ、ホットドッグセットやスムージーといった食品も販売されます。
店舗内は、部屋を模した「ルームセット」の展示(今回は1カ所のみ)や、リビングなど部屋ごとのエリアが設けられ、広島の家庭をイメージした展示(お好み焼きやカキなどの名物を取り入れた遊び心のある演出)を通じて、具体的な暮らしのアイデアを体感できるよう工夫されています。
オムニチャネル戦略の一環として、オンラインやアプリで注文した商品を店頭で受け取れるサービスも提供されます。広島県内ではすでに、大型配送専用の受取センター3カ所と小物配送専用の拠点11カ所が整備されています。
過去の出店計画の経緯
イケアはかつて、2013年にJR広島駅北口の二葉の里地区(広島市東区)の国有地(1万8800平方メートル)を取得し、大型店舗の出店を目指していました。しかし、出店戦略の見直しにより、2021年にこの土地を不動産大手の住友不動産に売却し、計画は一旦白紙となっていました。
なお、この元IKEA予定地については、現在、住友不動産が分譲マンション、ホテル、温浴施設などが入る地上31階建ての複合ビル(2026年2月着工予定、2029年3月完成予定)を計画しており、地元関係者は家族連れが楽しめる施設を求めています。また、大和ハウス工業も隣接地に一部商業施設が入る10階建てのオフィスビル「d_ll HIROSHIMA」(ディール広島)(2025年11月完成予定)を計画しています。
私の見解
ポップアップの好反響を受けた常設化は、地域ニーズの実在とIKEAのローカル戦略の勝利を示しています。小型店舗という形で「身近さ」を優先した出店は認知拡大と来店ハードル低下に寄与すると考えます。
店頭で持ち帰れる品揃えとEC連携による受取サービスの両立は、利便性と即時満足を両立した設計です。特に収納アイテムを強化した点は、実需に応える現場視点の良い判断だと思います。
今後は在庫回転率や配送・受取の運用、来店動線の最適化が成長の鍵です。地域性を活かした展示やイベントでリピーターを育て、広島の生活に定着させる施策を継続すると更に効果的と考えます。
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