実施に至った経緯と期間
運賃無料ウィークで把握したニーズ
福山市の「バス共創プラットフォーム」(事務局:福山市都市交通課)は、地域のバス事業者や官民が連携してバス利用促進に取り組んでいる組織です。
この組織は、2024年12月18日から24日に実施された「路線バス運賃無料ウィーク」の結果を基に、「ニーズにあった運行便数の増便や新路線」の実証実験を実施することを決定しました。この機会に普段バスを利用しない人々にも乗車してもらい、利用を促す狙いがあります。
2025年10月から始まる実証期間
実証実験の期間は、2025年10月1日(水)から12月31日(水)までのおよそ3か月間です。年末は休日ダイヤが適用されます。この実証実験では、現金や交通系ICカード(ICOCAなど)が利用できます。
各路線の増便と新路線の詳細
既存路線の利便性向上
2024年の運賃無料ウィークで利用が多く、増便の要望も多かった3つの既存路線で増便が実施されます。増便の対象は全て平日です。
- 大谷台線(中国バス):福山駅と大谷台団地を結ぶ路線です。平日昼間に2便、金曜日夜間に1便が増便され、日中は概ね30分に1便の間隔が確保されます。金曜日21時30分発の便は、金曜日のみの運行です。
- 福山市民病院線(井笠バスカンパニー):福山駅と福山市民病院を結ぶ路線です。平日昼間に2便が増便され、日中は概ね30分に1便の間隔が確保されます。
- 多治米車庫線(中国バス):福山駅と川口町を経由して多治米町を結ぶ路線です(卸町線や福山港線なども含まれる場合があります)。金曜日夜間に1便が増便され、21時15分発の便は金曜日のみの運行です。
観光周遊を促進する新たなルート
鞆未来トンネルの新路線(沼南線)が新設され、鞆鉄道株式会社が運行を担当します。
- ルートと運行日:鞆未来トンネルを通り、松永駅と鞆港を結ぶ新路線が設定されました。この路線は平日・休日ともに1日4便運行されます。
- 観光周遊ルート:休日に特化した新路線として、沼隈支所と鞆港を結ぶルートも新設されました。このルートは国重要文化財である阿伏兎観音を経由し、沼隈半島の観光周遊を促す目的があります。休日は1日6便運行されます。
- 他の交通機関との接続:この新路線は、鞆町内を走る小型電動車両「鞆町グリスロバス」にも接続されます。鞆鉄道は、今回の実証実験の結果を踏まえて本格運行を目指します。
路線バスの利用促進と情報提供の試み
100円運賃キャンペーンの実施予定
バス共創プラットフォームは、実証実験の一環として、12月の2週間、「路線バス100円 2ウィークス」を実施する予定です。
高速バスと一部を除く福山市内を発着する路線が対象となり、普段バスを利用しない人々に利用のきっかけを提供します。このキャンペーン期間中、乗降状況の把握と利用者アンケートが行われ、効果の検証が図られます。
Googleマップを活用した便利な情報収集
実証実験の対象路線を含むバスの運行情報については、Googleマップを利用して調べることが推奨されています。
Googleマップでは、1回の検索で最寄りの停留所、路線、運賃、時刻、所要時間などの複数の情報をまとめて確認できるほか、バスの遅れ、運休、迂回などの運行状況、さらに乗車予定のバスがどこにいるかの位置情報も把握できます。
私の見解
今回の実証実験は、福山市が地域の声を丁寧に拾い上げ、生活の足を守る姿勢を示したものだと感じます。運賃無料ウィークで得られた利用者データをもとに、増便や新路線を設定する点は、住民参加型の公共交通づくりとして評価できます。
特に、鞆未来トンネルを活用した新路線の導入は、通勤・通学だけでなく観光振興にも寄与する可能性があります。地域資源を活かした交通ネットワークが整備されれば、暮らしの利便性と地域の魅力発信が両立するでしょう。
実証期間中のデータをどう生かすかが今後の鍵です。運行実績やアンケート結果を踏まえ、持続可能な交通政策として定着することを期待します。バス利用が「便利で快適」と感じられる環境づくりが、市民の移動習慣を変えていくはずです。


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