岸田派分裂と高市総裁誕生:広島からの視点で読む政局

メモ

石破首相、わずか1年で退陣へ

参院選惨敗後の政局混乱、広島にも波紋

2025年7月の参議院選挙での歴史的な大敗を受け、石破茂首相(当時)に対する党内の退陣圧力が強まりました。石破首相は続投の意向を繰り返し表明していましたが、9月7日、ついに辞任を表明しました。この辞任は、発足からわずか1年での退陣であり、広島県内でも波紋を広げました。

広島の政界と市民の複雑な反応

石破首相の辞任表明を受け、広島の市民からは「期待していたので残念」という声や、「言っていることは良かったが実行力不足だった」という意見、また「辞任は遅かった」という批判的な声も聞かれました。

自民党広島県連は、当初予定していた総裁選「前倒し」に関する議論を、辞任表明を受けて取り止めました。自民党広島県連の平口洋会長は、今回の辞任を「肩すかしをくらった感じ」と表現し、次の総裁には地方創生に馬力を持って取り組める人物を望む考えを示しました。また、次の総裁にはアメリカとの交渉において粘り強く対応できる人物が望ましいとも述べました。

立憲民主党広島県連の佐藤公治代表は、石破氏の辞任は当然のこととしつつ、リーダーとしてのけじめが遅くなったことや、参院選後の国政停滞は「無に近い状況だった」と強く批判しました。

平和への思いが支持率に影響か

石破首相は、辞任前の8月6日には広島市の平和記念式典に出席し、原爆記念日のあいさつが国民から高い評価を得た可能性が指摘されていました。そのスピーチは過去の首相の「コピペ」傾向とは異なり、「心に響いた」との好意的なコメントが多く寄せられ、一時的な内閣支持率上昇の一因になったと見られています。

一方、広島県被団協の箕牧智之理事長や佐久間邦彦理事長は、党内の権力争いに冷ややかな声をあげ、次の首相には「核兵器禁止条約に最低でもオブザーバー参加してほしい」といった、平和維持のための取り組みを忘れないようにと要望しました。

地元・広島で交錯した総裁選の票の行方

自主投票と党員投票の状況

石破首相の辞任を受けて、自民党は党員投票を含めた「フルスペック」で総裁選を実施する方針を固め、9月22日に告示、10月4日に投開票が行われました。

広島県連は総裁選の方針として「自主投票」を決定し、党員・党友2万2228人に向けて投票用紙が発送されました。10月4日には広島市内のホテルで開票作業が行われ、今回の広島県連の投票者数は1万5748人、投票率は70.85%で、前回の68.12%をわずかに上回りました。

広島を地盤とする旧岸田派の分裂

総裁選で大きな影響力を持つと見られていたのが、岸田前首相がトップを務めていた「旧岸田派」の動向でした。広島県選出の国会議員が多く所属する旧岸田派でしたが、支持候補が分かれる状況となりました。

比例中国ブロック選出の寺田稔議員は、林芳正氏を支持し、旧岸田派(宏池会)として培ってきた政策の類似性や、林氏の経験・実績から上回る候補はいないと確信していると述べました。

一方、広島6区の小林史明議員は小泉進次郎氏を支持しました。小林議員は、岸田政権で官房副長官を務めた木原誠二議員らとともに、小泉陣営で中心的な役割を担いました。

旧岸田派のメンバーは林陣営と小泉陣営の二つに分かれる形となり、岸田前首相自身は、どの陣営を支持するか発言しづらい難しい立場にありました。

女性初、高市新総裁誕生と広島からの期待

広島県連党員票の最多獲得者は林氏

総裁選の投開票が行われ、1回目の投票で過半数に達する候補者がいなかったため、上位2人の高市氏と小泉氏による決選投票となりました。最終的に高市早苗氏が第29代総裁に選出され、高市氏は臨時国会で史上初の女性首相に指名される見通しです。

林芳正氏6118票
高市早苗氏5485票
小泉進次郎氏3076票
茂木敏充氏539票
小林鷹之氏462票

なお、広島県連の党員・党友票の結果を見ると、林芳正氏が最多の6118票を獲得し、高市氏、小泉氏が続きました。決選投票では、広島県連に割り当てられた1票は高市氏に投じられました。

新総裁に託された広島の願い

高市新総裁の誕生を受けて、広島の市民からは「応援していた」「初めての女性総裁なので子育て支援など頑張ってほしい」といった期待の声が聞かれました。また、ある自民党員は、高市氏の「夢がある日本を作っていく」という考えや、女性としての新たな視点に期待を寄せました。

新総裁に求めることとして、広島県連の中本隆志会長代理は、国民が何を望んでいるかを政策として明確に打ち出し、信頼回復ができる総裁の誕生を強く望むと述べました。広島商工会議所の池田晃治会頭は、政権運営の安定が経済政策実行の前提であるとし、安定した体制構築を求めました。広島の街の人は、物価高の抑制や経済の円滑な回復を重要なポイントとして挙げ、大学生からは、教育費用が高く進学を諦める子が多いため、教育がしやすい社会への変革を望む声が上がりました。

私の見解

旧岸田派の分裂は党内だけでなく、広島という地域政治そのものにも揺らぎを与える出来事です。地域の利害や期待を統合できる新たなリーダー像が、今後求められるでしょう。

女性初の総裁という歴史的な節目は、地方からの期待をさらに後押しします。広島の有権者が政策の「見える化」を強く求める中で、高市氏の言動には注目が集まるでしょう。

ただ、象徴性だけでは地方の課題解決には不十分です。地方創生、人口減少、雇用創出など、広島が直面する実務的テーマに真正面から取り組む姿勢が問われます。

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