答申の内容と背景
広島地方最低賃金審議会(会長 岡田行正)は、令和7年8月18日、広島労働局長(小沼宏治)に対し、広島県最低賃金を「時間額1,085円」に改正することが適当であると答申しました。
これは、今の最低賃金(1,020円)を65円引き上げるもので、引き上げ額としては過去最大となります。最低賃金が上がるのは5年連続で、今回の上がり方(額も割合も)どちらも過去最高です。
今回の審議は、7月15日に労働局長から諮問を受けて始まりました。その後、8月4日に国の中央最低賃金審議会が示した目安(広島県は63円アップ)を参考に、労働者の生活費や給料、会社が払える力、広島県の雇用の状況などを考えて結論を出しました。今回の引き上げは、物価が上がっている中で、働く人の生活を守ることが目的です。
改正決定までの手続きと効力発生日
広島労働局長は答申を受けて内容を公示し、9月2日まで異議申し立てを受け付けました。一部の労働組合からは「1,085円では月20万円の手取りに届かない」との声がありましたが、審議会は「再審議の必要はない」と判断しました。その後の手続きを経て、正式に改正が決まり、令和7年11月1日から新しい最低賃金が適用される予定です。
答申の中では、中小企業への影響が大きいことも指摘されており、国に対して賃上げを支えるための支援をもっと強化してほしいと求めています。広島労働局の小沼局長は、最低賃金法に基づいて対応し、中小企業に助成制度を紹介して支援していくと話しました。
賃上げ支援策と過去の推移
広島労働局では、生産性向上(設備・人への投資等)や、非正規雇用労働者の処遇改善、より高い処遇への労働移動等を通じ、労働市場全体の「賃上げ」を支援する各種助成金を一層活用してもらうため、9月に重点的な周知を行うとしています。9月には、これらの助成金について特に集中的に知らせていく予定です。
広島県の最低賃金の過去の推移は次の通りです:
- 令和3年度:899円(28円アップ、3.21%上昇)
- 令和4年度:930円(31円アップ、3.45%上昇)
- 令和5年度:970円(40円アップ、4.30%上昇)
- 令和6年度:1,020円(50円アップ、5.15%上昇)
- 令和7年度(今回の答申):1,085円(65円アップ、6.37%上昇)
適用される最低賃金の種類
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、両方の最低賃金の適用を受ける場合は、高い方の最低賃金額が適用されます。
今回の改正が実現すれば、「広島県製鉄業、鋼材、銑鉄鋳物、可鍛鋳鉄製造業、その他の鉄鋼業最低賃金」を除き、多くの働く人に広島県の最低賃金(1,085円)が適用される予定です。
全国との比較
全国平均では、今年度の時給の全国平均は1,121円になります。今までの1,055円から66円上がり、これも過去最大の上げ幅です。
39の都道府県では、国が示した目安(63円アップ)より大きく引き上げられました。最も高いのは東京都の1,226円、次いで神奈川県1,125円、大阪府1,177円です。最も低いのは高知県・宮崎県・沖縄県の1,023円ですが、それでも全国すべての都道府県が1,000円を超えるのは初めてです。地域間の差も11年連続で縮まっています。
私の見解
今回の広島県の最低賃金引き上げは、物価の上昇に対応して「働く人の生活を守る」ための大きな一歩です。過去最大の65円アップは歓迎される一方、中小企業には負担も増えます。国や県の支援策をしっかり使えるようにすることが、賃上げを定着させるカギになると考えます。
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