広島の新たな交通網と地域の魅力(2)広島の都市交通網の変革と課題

メモ

西広島バイパス都心部延伸工事が本格化!大規模交通規制と渋滞対策

国道2号西広島バイパスの都心部延伸工事が、10月1日午後10時から本格的に始まります。この事業は、広島市西区観音本町から中区平野町までの2.3キロを高架で結び、慢性的な交通渋滞の緩和と沿線環境の改善を目指すものです。

高架工事の本格化に伴い、新明治橋周辺の約600メートルを皮切りに段階的に終日車線規制が実施されます。具体的には、片側3車線のうち、日中は1車線、夜間は2車線が規制され、通行帯はそれぞれ片側2車線と片側1車線になります。

この規制により、朝の通勤時間帯を中心に現在の1.5倍にあたる最大約9キロの渋滞が発生すると予測されており、特に混雑が激しい午前7時台には交通量を3~4割削減する必要があると試算されています。

国土交通省、広島市、警察などは協議会を設置し、「行動宣言」を採択して渋滞対策に取り組むことを決定しました。市民に対しては、迂回路の利用、公共交通機関の利用促進、時差出勤、テレワークの活用などが呼びかけられています。

迂回路としては、平和大通り、広島南道路、市道霞庚午線、相生通りなどが挙げられています。しかし、相生通りは多くのバス路線や路面電車が運行しているため、迂回車両の増加が公共交通機関の円滑な運行に影響を与える可能性も指摘されています。

公共交通機関も対応!バス路線・ダイヤ改正で渋滞緩和へ

西広島バイパス延伸工事による渋滞悪化が懸念される中、広島電鉄と広島バスは公共交通機関の利用促進と混雑緩和のための施策を実施します。

  • 広島電鉄バス3号線(観音~広島駅)では、平日朝ラッシュ時間帯の広島駅行きに、平和大通りを経由する急行便が3便新たに設定されます。この急行便は観音新町三丁目始発で、7:13発、7:38発、8:11発の3本が運行されます。新たに観音小学校東門前と放送会館前に停車バス停を設置し、国道2号線の混雑を避けることで定時性向上が見込まれ、通勤・通学の利便性向上が期待されています。
  • 広島電鉄バス10号線と広島バス25号線(己斐(西広島)~市役所~大学病院・旭町)では、朝の己斐(西広島)発の運行時間帯が拡大され、8時台後半から9時台にかけて市役所行きが4便増便されます。オフピーク時間帯の運行拡大により、時差出勤などにも対応しやすくなります。
  • 広島電鉄バス54・55号線(西広島バイパス経由便)では、国道2号線の混雑回避のため、平日の各団地の始発時刻が5~15分繰り上げられ、7時台の運行が6時台にシフトされます。具体的には、四季が丘発や薬師が丘発などの広島バスセンターゆきが対象です。一部便の始発地、行先、経由地の変更や、運行が終了する便もあるため、利用者は注意が必要です。土日祝日にも運行終了となる便が存在します。
  • 五日市駅発着便では、彩が丘発五日市駅北口ゆきが1便増便されるほか、一部便の始発地、行先、経由地、運行時刻が変更されます。土日祝日にも運行を終了する便が複数あります。
  • 広電バス宮園・四季が丘線、廿日市さくらバス宮内ルートでは、平日宮内串戸駅発四季が丘ゆきが1便増便され、一部便の運行時刻が変更されます。
  • 広島電鉄の市内電車では、鉄道接続駅からのアクセス強化と市街地中心部への輸送力向上のため、時差出勤時間帯の臨時便運行や、5200形グリーンムーバーAPEXなどの大型車両の導入が計画されています。

これらのダイヤ改正は、市内3・10号線では10月1日(水)から、広島市西部エリアでは10月14日(火)から実施されます。

広電駅前大橋ルート開業1カ月、利用者増とバリアフリー、音のこだわり

8月3日に開業した広島電鉄の駅前大橋ルートは、開業から1カ月で全路線の利用者数が前年同期比で1割増となり、1日平均で9,000人増加したと発表されました。JR広島駅ビルの商業施設「ミナモア」との相乗効果や、被爆80年に伴う来広者の増加などが、この利用者増加の要因として挙げられています。

全国で初めてJR駅ビルの2階に乗り入れたこの新路線は、広島駅と比治山町交差点を結ぶ全長1.1キロの区間で、地域の利便性向上に貢献しています。

また、新路線の開業と同時に始まった路面電車の「快速便」実証運行も順調です。この快速便は、平日の午前7時台に広島駅発・広島港行きで2便が運行され、広島駅と紙屋町東の間にある5つの電停のうち3つを通過することで、区間をおよそ1分短縮します。

実証運行開始から1カ月で、広島駅から平均83人が乗車しており、快速便以外の同時刻の利用者数(平均47人)と比較して、速達性向上への一定のニーズがあることがうかがえます。この実証運行は今年12月末まで継続される予定です。

開業1カ月を迎えた駅では、バリアフリー化の点検も行われました。中国運輸局が企画し、広島電鉄や県内の障害者・高齢者団体など26人が参加し、駅のホームやエレベーターなどを点検しました。参加者からは、電光掲示板の設置位置を低くしてほしい、点字の時刻表を設置してほしいといった具体的な要望が出されました。

一方で、床がフラットで移動しやすいという肯定的な意見もありました。エレベーターでは、キャリーケースを持った観光客の利用が多く、車いす利用者がスムーズに乗れないといった課題も指摘されました。

広島電鉄は、利用者からの意見は作り手が見落としがちな点を指摘する貴重な機会であり、今後の施設改善や新規設備への反映に繋げたいと述べています。国土交通省はこれらの意見を、バリアフリーガイドラインの改定に活用するとしています。

駅前大橋ルートの開業に合わせて、駅や車内で使用されるメロディーも一新されました。この新しいメロディーは、鉄道関連の楽曲制作を手がけるにかもとりか氏が担当。新しいメロディーは利用者から好評で、批判の声はほとんどないと広電職員は語りました。

  • Aホーム(5号線 比治山下方面)の出発メロディーは、広島港へ向かうワクワク感をテーマにしたリズミカルな曲です。沿線にあるこども漫画図書館を訪れる子供たちや、大人も楽しめるよう配慮されています。
  • 紙屋町方面へ向かう電車の発車メロディーは、街中を通る路線であり、海外からの利用客も多いため、「日本を感じる」をテーマに制作されました。ヨナ抜き音階を使用しており、海外の利用者がより日本を感じられるような音色になっています。
  • 稲荷町電停では、駅や停留場が民家に隣接する場所も多いため、鉄道らしい接近メロディーでありつつも、生活の邪魔にならないよう、柔らかい音色のメロディーが採用されました。上り線と下り線で異なるメロディーが使用されており、「のぼる」「くだる」という単純なイメージで区別されています。宮島線にはまだ導入されていませんが、別のメロディーが用意される予定とのことです。

私の見解

これらの取り組みは、広島の交通インフラがより便利で快適に、そして地域の魅力を引き出すものへと進化し続けていることを示しています。

短期的な痛み(工事による渋滞や運行変更)を受け入れても、中長期的には公共交通の利便性向上・観光消費の拡大・地域回遊性の向上につながる合理的な投資だと考えます。ただし成功させるには「現場での運用調整」と「利用者・事業者へのきめ細かい情報提供」が不可欠です。

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