呉地区における複合防衛拠点整備(5)今後の展望と地元からの多様な声

メモ

土地取得に向けた合意と推進体制

2025年7月31日、防衛省と日本製鉄株式会社は、日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区跡地の売買契約締結に向けた基本的事項の合意に至りました。

防衛省は、複合防衛拠点の整備が防衛力整備計画に基づく防衛力の抜本的強化につながる安全保障上の意義があると考えています。

この合意を受け、防衛省は防衛事務次官を長とする「多機能な複合防衛拠点整備推進委員会」を設置し、機能検討、地元調整・用地取得、施設整備、民間誘致などを一体的に推進していく方針です。

令和8年度概算要求では、この土地の早期取得に必要な経費が要求される予定です。

呉市、広島県、そして市民からの声

呉市は、この複合防衛拠点の整備案を「重要な選択肢」と捉え、経済波及効果や雇用創出効果への期待から、最終案を真摯に受け止め、早期整備を要請する方針を固めました。

新原市長は、住民説明会での賛成意見が多数であったこと、市議会の9割が賛成したことを受け、「民主主義としてはいいタイミングではないか」と述べています。

一方で、広島県は、防衛省からの説明では民間誘致の規模や内容、雇用増といった地域経済への影響が不明確であり、引き続き詳細かつ丁寧な説明を求めています。

市民団体からは計画への強い反対意見も上がっています。

戦艦「大和」が建造された旧海軍工廠の跡地が再び軍事拠点化することへの懸念、「軍都・呉市」への逆戻りを危惧する声、そして「有事の際には攻撃目標となる」との危機感も表明されています。

市民グループは平和産業誘致を求め、計画の撤回や住民説明会の開催を求める署名活動も行っていますが、市は当初「住民の意見は議会が代表している」として住民説明会には応じていませんでした。

しかし、2025年4月に市主催の住民説明会が開催され、様々な質疑応答が行われました。

人口減少に悩む地方自治体が国の要望に応じることで地域振興を図る状況は「地方自治を侵害している」との批判も出ています。

このように、複合防衛拠点の整備を巡っては、多様な意見が交錯しています。

私の見解

この計画は、安全保障と地域振興を両立させる可能性を秘めた一方で、呉の歴史的背景や住民の生活不安との調和が最大の課題です。国防だけでも、経済だけでもなく、「地域と共存する新しい防衛拠点」としてのモデルケースを示せるかどうかが問われていると思います。

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