過去最大の予算と市長の強い推進意欲
福山市は、ネウボラセンターの整備を2025年度の重点政策の一つに位置づけており、2025年度当初予算案では一般会計が過去最大の1998億3千万円(2024年度比5.1%増)となり、子育て支援に重点的に配分されています。
枝広直幹市長は、2024年8月の市長選で3選を果たし、公約に掲げたネウボラセンター創設を含む子育て環境のさらなる充実を強く推進しています。
福山市の児童虐待相談・通告件数が3年連続で増加し、2024年度には過去最多の1290件を記録したことからも、ネウボラセンターによる早期発見と支援体制の強化が期待されています。
プロポーザルで選定された事業者による整備
ネウボラセンター整備業務は、公募型プロポーザル方式で委託業者を選定しました。これは価格だけでなく、専門知識・経験、提案内容が評価される方式です。
2025年3月21日に公告され、4月8日から4月18日にかけて企画提案書が提出されました。4月23日にはプレゼンテーションが実施され、4月25日に選定結果が通知されました。
その結果、株式会社ティ・シー・シーが最優先候補者に選定され、2025年6月23日に契約金額155,694,000円(消費税及び地方消費税相当額を含む)で随意契約が締結されました。同社は2008年設立の企業です。
市民の意見を反映し、地域全体で子ども・若者を支える
福山市は、子育て施策に市民の声を反映するため「こども未来づくり100人委員会」を立ち上げ、議論を重ねてきました。
2025年3月14日には、市民グループからネウボラセンターの設置や運営について市民の意見を反映する場の設置、市役所支所への託児・居場所設置などの要望書が市に提出されました。天満屋という場所が、困難を抱える人々にとってアクセスしにくい可能性があるという懸念も示されており、市は支所での支援充実も視野に入れています。
2025年8月12日には工事箇所の見学や各エリアの概要説明を行う現地見学会が開催され、市民へのお披露目が行われました。
福山市は、ネウボラセンター開設に向けて2025年2月には担当課長を配置する組織案を示し、2025年3月の人事異動でもネウボラセンター開設に向けた体制強化が行われました。市は、地域全体で子どもや若者を支える環境を構築していく方針です。
私の見解
- 「こども基本法」を受けた地方自治体レベルでの本格的な実装
- 福山市が独自に取り組んできた「福山ネウボラ」を、国の法整備を追い風に大幅に拡張した点は評価できます。
- 妊娠期から若者期までをカバーする体制は全国的にも先進的で、単なる子育て支援にとどまらず、ヤングケアラーや不登校、ひきこもりなど若者世代の課題も射程に入れていることは大きな意義があります。
- 「商業施設内」という立地の意外性と利便性
- 天満屋福山店という百貨店内に設置されたことで、日常的な買い物と子育て支援・若者支援が同じ場所で完結する利点があります。
- 一方で、市民から懸念が出ているように、交通アクセスや心理的な「入りやすさ」という観点では改善余地もあり、将来的に支所や地域拠点とのネットワーク整備が課題になるでしょう。
- 空間デザインの工夫と安全性への配慮
- 0~3歳向けと4~8歳向けの遊戯場を分けて整備し、インクルーシブな遊具を取り入れる点は「共生社会」の理念と一致しています。
- また、授乳室・おむつ替え室を拡充し男性も利用可能にするなど、ジェンダーに配慮した設計は先進的です。
- 「若者期」への支援拡張の意義
- これまで行政の支援が手薄になりがちだった中高生~30代へのアプローチ(不登校、ヤングケアラー、ひきこもりへの相談機能、居場所づくり)は重要なポイントです。
- 特に、家庭・学校以外の「サードプレイス」としての役割は、社会参加のきっかけになる可能性があります。
- 財政的裏付けと市長の推進姿勢
- 過去最大の一般会計に子育て支援を重点配分し、かつ市長が選挙公約として推進している点からも、単発の事業ではなく持続的な施策として位置づけられていることが分かります。
- 市民の声を取り入れる「こども未来づくり100人委員会」の取り組みもあり、今後の運営の透明性や市民参画度が成否を分けるでしょう。
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